社会における様々なパターンや現象をネットワークの観点から捉える

私たちの社会には,人と人の繋がりからなる友人関係ネットワークや,同時購買による商品間ネットワーク,インターネットのネットワークなど,様々なネットワークが潜んでいますが,それら様々なネットワークにおいて,その構造が複雑ネットワークと呼ばれる共通の特性を持っていることが分かってきています. こういった研究は20世紀の最終盤に勃興した比較的新しい学問分野で,ネットワーク科学と呼ばれ,現在も盛んに研究が行われています. 私の研究では,数理モデルとコンピュータシミュレーションを駆使しながら,

  • 社会に潜むネットワークの構造・機能
  • その成り立ちの仕組み
  • より効率的なネットワークの実現のための制御・誘導の仕組み
などを明らかにすることによって,未だ知られていない社会の有り様を知ることに挑戦しています.

具体的には,以下のような研究を行っています.


自律的・分散的な社会ネットワーク形成のモデル化

友人関係ネットワークなどの社会ネットワークは,個人同士が自律的・分散的にエッジ形成を選択し合って構築されたネットワークと見ることができ,ゲーム理論に基づいてモデル化することができます.
「ネットワークから得られる利得とプレイヤーの戦略決定モデルによって,どのようなネットワークが構成されるのか?」
「現実社会に見られるネットワーク構造は,どのような設定によって得られるのか?」
をネットワーク理論とシミュレーションによって明らかにすることに挑戦しています.

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感染症拡大を抑制する社会ネットワークの制御・誘導

社会ネットワークの構造は感染症の伝播効率に強い影響を与えます. 今般のコロナの拡大に対しても,人と人との接触を制限して感染症拡大を抑制する試みが行われていますが,一方で社会的活動も強い制限を受けてしまっています.
今後のwithコロナ社会に向けて,
「ある程度の社会的活動を維持しつつ感染症拡大を抑制する適切な社会ネットワーク構造とは,どのような構造なのか?」
「感染症の拡大を抑制するための最適なワクチン接種戦略は,どのようなものか?」
などについて,ネットワーク理論,数理モデル,コンピュータシミュレーションを通して明らかにすることに挑戦しています.


コラボレーションネットワークの分析とモデル化

学術論文の共著者ネットワークは,著者をノードとし,共著関係にある著者同士をエッジで結んだネットワークであり,コラボレーションによって形成される社会ネットワークの一つと見ることができます.
「コラボレーションネットワークはどのように形成されているか?」
「これからどのように成長していくのか?」
などを明らかにするために,学術文献データベースから大量の論文を抽出して学術分野ごとの共著者ネットワークを構築した上で,ネットワーク理論や大規模データ分析技術などを用いて,学術分野ごとの特徴の違いや効率性などについて分析しています.

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IoT・AIによる地域産業の課題解決

最近のAI・IoT技術の進展によって,これまで人間の労働者によって行われてきた様々な業務が,自動化・効率化できるようになってきました. 例えば工場の生産ラインなどでは,センサ・カメラやRaspberry Piなどのシングルボードコンピュータを用いたIoTシステムによりデータを取得・蓄積し,ディープラーニング等の機械学習を実施することにより,現場の熟練者が勘と経験に基づいて行ってきた異常検知や効率化などの業務を自動化・効率化することができるようになってきています.

具体的には,以下のような研究があります.

研究例1:沖合に設置される浮沈式生け簀のIoT化

  • 市販のカメラと各種センサによる生け簀内観測,生け簀内部観測と給餌業務をスマートフォンによる遠隔操作で実施
  • 給餌・生育データによる機械学習により,生育効率最大化をもたらすインテリジェント給餌へ

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研究例2:工場の生産設備のIoT化とAIによる製品異常の自動検出

  • 工場の生産ラインへのカメラ設置による継続的監視,データ取得
  • 機械学習に基づく製品異常の自動検知とアラート発出
  • 異常発見の予兆検出へ

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興味分野・関連分野

  • ネットワーク科学
  • 大規模並列計算による社会シミュレーション
  • ゲーム理論
  • 複雑系
  • 機械学習
  • IoT
  • 通信ネットワーク
  • etc.